クレイマークレイマーは、うちの方言だった。
フレンチトーストを作った。
でも頭の中では、
フレンチトーストより、
クレイマークレイマー、
という言葉の方が先に出てくる。
子どもの頃、
うちではそう呼んでいた。
母がそう呼んでいたから、
私はそれが正式名称だと思っていた。
小学校高学年くらいだったと思う。
友だちとの会話で、
どうも話が噛み合わない。
「昨日クレイマークレイマー食べた」
と言っても、
誰も反応しない。
そりゃそうだった。
フレンチトーストの話をしていたのは、
私だけだった。
後から知った。
それ、
フレンチトーストだった。
どうりで話が合わない。
恥ずかしかったような。
でも少し笑えたような。
そういう感じで、
その日の話は終わった。
それから何十年も経って、
今も私はフレンチトーストのことを、
頭の中でクレイマークレイマーと呼んでいる。
口には出さないけど。
学習はした。
それでも、
定着はしなかった。
たぶん、
どの家にも、
そういう言葉がある。
その家だけで通じる呼び名。
なぜか定着した略称。
ずっと正式名称だと思っていたもの。
うちでは、
フレンチトーストはクレイマークレイマーだった。
他にも、
きっとあった気がする。
でも、
もう思い出せないものもある。
家庭って、
小さな方言みたいなものなのかもしれない。
その家だけで通じる言葉があって、
その家だけの景色がある。
正しいかどうかじゃなくて、
そこにいた人だけが知っている、
小さな言葉。
今日も、
クレイマークレイマーを作った。
正式には、
フレンチトーストらしいけど。
低空飛行の景色を
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